わきお

日本沈没のわきおのレビュー・感想・評価

日本沈没(2006年製作の映画)
3.0
◾️足さねばならないという強迫観念

小松左京原作の傑作パニック作品のリメイク。未曾有の地殻変動により翻弄される日本国民の姿を描く。

言わずもがな災害国家である日本においては、その脅威というものを遺伝子レベルで刷り込まれているものと私は感じる。特に2011年の震災により深く刻み込まれた記憶が、より災害に対する恐怖を増長させたと思う。

東日本大地震以前に公開されたこのリメイク版日本沈没は、災害の恐怖を煽る映像の迫力に目を見張るものがあった。特に、沈みゆく国土を都度都度俯瞰で映し出すシーンは、故郷が失われていく絶望感をなかなかのパンチ力で伝えてくる。私の愛する街横浜も海底に沈んでしまったのかと考えると、やはりゾッとするものがある。関東を襲う地震がいずれ訪れると腹を括っているが、実際には起こってほしくないものと切に思わされました。

しかしながら、相変わらず要素を足しに足してまとめ上げられない悪い癖が目立つ。政府、市井の人々、男と女らを描く群像劇が本作のフレームとなっているが、こまめなスイッチを繰り返す様はやはり散漫な印象を拭えない。広い顧客層に見てもらいたいというマーケット的な顔色伺いがそうさせているのだろうが、はっきり言って邪魔だ。ただし、いらない要素を廃しても作品として面白くなることは、本作の10年後に公開されるシンゴジラで改善されていることで溜飲が下がった部分はあります。

あと、草薙くんが劇中どこにいるのか全く分からない点、こんな状況下でGo to函館している呑気な人々などツッコミどころも多い。結果と過程を考える順序が逆ではないか。このあたりは丁寧に描いて欲しいものだ。

スペクタクルシーンには満足するも減点箇所が目立つ作品だった。辛抱、我慢をもう少しして欲しかったところだ。
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