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茄子 アンダルシアの夏のじのレビュー・感想・評価

茄子 アンダルシアの夏(2003年製作の映画)
4.5
 踏みしめるペダルの一踏み一踏みが、故郷から遠ざかる道を蹴る。遠ざけてしまいたい思い出は重力と乳酸となって足を鈍くする。振り払うように腰を上げ、誰よりも早くと願いながらゴールを目指す。この競技が持つドラマと呪いがそのまま画面の中で動いているようだった。ゴールを最初に切るその人は、どんな思いで孤独な戦いに向き合うのか。遠くに行きたいという思いは、純粋にペダルを踏む足に力を与える。プロトンの彼らは何のためにそこにいる? 憧れ? 名誉? 賞金? 破裂しそうなほど高鳴る心臓も落ち着かないまま、気持ちの準備と息が整うよりも先に震えるほど恐ろしい下りカーブがやってくる。ブレーキもかけず、体重移動だけでコーナーをやり過ごしながら、誰もがこう思う。
「なんでおれはこんなことしてるんだ!」
下りで鎖骨をやった僕が言うのだから、間違いない。
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