Tatsu

本気のしるし 劇場版のTatsuのネタバレレビュー・内容・結末

本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

4時間で圧倒されるが、テレビで見てれば凄いと思っただろうな。多分今作の浮世は『寝ても覚めても』の朝子に近くて、彼女と他の者たちはいつでも鏡像関係になり、いつでも誰かにとっての正体不明の人になる可能性がある。彼らは鏡像関係であるから惹かれあう。『寝ても覚めても』の構図を分かりやすく(正直後半はあまりに分かりやすすぎるのだが)、示している恋愛映画として面白かった。
演出としては深田晃司はやはり少し甘いところがある。例えば2人が出会うコンビニの場面で、森崎ウィンが買うのがミネラルウォーター一本でそれを袋に入れられる。そして帰り道、ビニール袋に入ったその水を歩きながら飲むところを見て、お前はさぞ家に一本も水を買い貯めて置いてなくて、さぞ喉が乾いていたんだなと思ってしまった。つまり、彼にコンビニで何かを買わせなければならないから適当に水の一本でも買わせた、くらいにしか見えず、こういった、細かい描写が引っかかる。登場人物たちの生活感が見えづらく、微妙に弱いと感じてしまうのは、そういうところの蓄積だと思う。
全編に多用される70年代アルトマンズーム(自分が適当にそう呼んでいる)は、あまり機能してなかったように思うが、終盤、辻らしきに人を、娘を捉えるスマホのカメラを通して目撃し、浮世自身が覗き見るようにカメラの中をズームさせるシーンで、映画内でそのズームを実践させる。魚の名前がマーロウはやりすぎ。
深田晃司、正直尺、技量、作家性が全てマッチしてたのが『淵に立つ』で、あれがいまだにベストという気がしてならない。
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