中島晋作

本気のしるし 劇場版の中島晋作のレビュー・感想・評価

本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)
2.8
部屋の水槽の音が常に強調されることで、部屋全体が水槽になり、中にいるザリガニが擬人化されますよね。つまりこれパラサイトの映画なんですけど、深田監督の映画って、メタファーとアナロジーの映画やなぁと改めて思います。たぶん、『淵に立つ』はそれが一番成功していたんですが、最近の映画、特に今作はうまくいってないと感じました。

よく『寝ても覚めても』と比べられてるみたいですけど、全然違いますよね。この映画でよくわかったのは、深田さんは理性の人なんだ、ということです。濱口さんは倫理も常識も超越した欲望を肯定しますよね。野蛮というか、だから面白いんですけど、深田さんは「マジメ」に留まってしまっている印象です。理性で映画を撮られてしまうと、見ている側は頭で映画を「考えて」しまいます。つまり、インテリになってしまうのです。「考えさせられる映画」ほどつまらないものはないのに。
最近よく思うのは、作る側も見る側も、ニンゲンをかなぐり捨てて動物へと生成変化しなければ、映画をほんとうに愉しむことはできないのではないか、みたいなことです。
中島晋作

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