SatoshiFujiwara

本気のしるし 劇場版のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)
4.2
本作、長いなあと躊躇しながらも「最高の幸せってどんな時に思います? 私は今です」と少し前のチョーヤのCMで瀬戸康史演じるバーテンダーにはにかみながら語りかける綺麗なお姉さんの土村芳(気になってたんですよねぇ)が主演と知って俄然観る気になりました。いや、深田晃司作品ですからもちろん知らなくても観たはずですが(苦笑)。

結果、232分の間退屈とは無縁。テレビドラマを映画用に編集したためか濃厚な起伏には欠けるものの、その都度事件が生起して小爆発を繰り返す。それにしても辻(森崎ウィン)が自分のアパートに浮世(土村芳)を連れ帰らざるを得なくなり、そこに辻と付き合っている会社の先輩、尚子(石橋けい。山内ケンジの『At the terrace テラスにて』の怪演が忘れ難い)がいきなりやって来て玄関先で浮世と鉢合わせするシーン、部屋に入っても続く極めて穏やかな大人のやりとりの最中にふと捉えられた尚子のいかにも不穏な横顔のショットが影の効果と表情、カメラワークも相まって一瞬ヒヤッとさせられる。あれは怖い。いかにも男目線、一方的に男が女に籠絡されるという趣のファム・ファタールという言葉とは少し違って、ここでの男女はその都度で優勢/劣勢に立たされても長い目で「総合的・俯瞰的に」みれば結局は同じなのだ。浮世の異様なキャラクター造形やリアリズム的にはそれどうなのよ的設定は逆にフィクションの力を最大限に発揮してこの映画を人生そのものとして描くことに成功している。深田晃司からの青年団繋がりで大竹直や山内健司、古屋隆太なんかがチョイ役で出演しているのも嬉しいところ。
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