Elly

Summer of 85のEllyのネタバレレビュー・内容・結末

Summer of 85(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

Filmarksのオンライン試写会で鑑賞。
(※かなりネタバレあります)

16mmフィルムで撮られているので少しざらついている画面がノスタルジック。どのシーンも美しくて、80年代がたっぷり詰まった感じ。音楽もファッションもとても素敵。ヨットと自転車はもうフランスらしさ満点で最高ですね…。

アレックスとダヴィド以外の人物描写があまり無くて、かなりさらっと進んでさらっと終わる。アレックスの頭の中の記憶を見せられているようだったな。アレックスにとって重要だったのはダヴィドと両親と先生くらいなもんで、狭い関係性の中で苦しんでいるのが16歳の物語という感じでよかった。

ダヴィドがさらっと自分のセクシュアリティを受け入れている一方で、アレックスにはゆらぎというか、まだどういう風に自分を捉えて振る舞ったらいいか分からない、という困惑が常につきまとっていたのが印象的で、自分の身に降りかかるあれこれの受け入れとかも含めてダヴィドはとにかく「はやい」人なんだな、と思った。それがアレックスには眩しかったのかも。

「墓の上で踊ってくれ」という誓いはどういう意味なんだろうってずっと考えていたんだけど、ユダヤ教の葬儀では家族は埋葬から一年はパーティーのような楽しい催しに参加してはいけない、というルールがあるほど厳格に喪に服すらしいのでそうしたタブーを犯す=自分への愛を示して欲しい、的なことだったのか、単純にダヴィドが湿っぽいのが嫌いそうなので「俺が死んでも楽しく見送ってくれや」的なことだったのか…どちらにせよアレックスがダヴィドのお墓の上で踊るシーンは異様さがあってとても良かったです。失敗した一回目も自分を切り捨てたダヴィドへの憎しみとダヴィドが亡くなったことへの悔しさで死体を掘り起こそうとするアレックスの混乱っぷりがすごく良かった。

すごく文学っぽい作品だな〜って思ってたら元の小説があるらしいので原作の「おれの墓で踊れ」を読んでみようと思った。フランソワ・オゾン監督が普遍的な恋の話にしたいと言っていたので「Summer of 85」というタイトルになったのだと思うけれど原題の「Dance on My Grave」でもなかなかパンチがあってよかったのにな、なんて思ったりした。
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