スウェーデンの実話を基にしたフランス映画。
落ちぶれた中年俳優が、刑務所内の囚人たちに演技を教え「ゴドーを待ちながら」の公演を目指す。
主役の落ちぶれた俳優役を演じるカド・メラッド(フランスの国民的スターらしい)はじめ、囚人役の俳優たちの演技が素晴らしい。
私は、中年俳優がなぜ囚人たちに多大な労力を費やし、囚人たちに演技を教え、公演を実現させたいのか“つまり動機”について、物語の前半部分では良く理解できなかった。しかし、物語が進むにつれ、その動機は少しずつ明らかになってくる。それぞれの公演を目指す動機は物語の核となる部分であると思うが、そこを丁寧にわかりやすく説明するのは野暮ということだろう(最近の日本の映画は比較的丁寧にわかりやすく物事にのめり込む“動機”を説明してくれるように個人的には思う)。
素晴らしい映画であるし、物語も面白い。
ただ、自分の自尊心や承認欲求を満たすために(少なくとも私はそう感じた)囚人たちに演技を教え、公演を成功させたい主人公の中年俳優に感情移入できない。また、このような話が現実として起こり、美談にされるとしたら、少し複雑な気持ちになる。
映画として物語を楽しめば良いのだが…