ShinMakita

スパイの妻のShinMakitaのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
1.4
1940年、神戸。福原優作は、世界中の商人たちと取引する物産会社社長として優雅な生活を送っていた。妻・聡子もその生活を享受し、優作の道楽である映画作りに参加して女優の真似事も楽しんでいる。そんな聡子の幼馴染である憲兵隊隊長・津森は、敵性外国人とも親しく交際する福原夫妻に行動を自重するよう忠告するのだった。アメリカとの関係が急速に悪化している今、欧米との戦争は必至。そうなると、優作も聡子も非国民、あるいはスパイとして厳しく取り調べを受けることになるからだ。だが、そんな忠告を聞き流す優作は、甥の文雄をつれてぶらりと満州に出張してしまう。そして数週間後、帰宅した優作は何か秘密を抱えている様子だった。その直後、津森に呼び出された聡子は、ある事実を突きつけられる。優作と文雄は、満州で草壁弘子という若い女と知り合い、日本に連れ帰ったのだという。この女、文雄が投宿する温泉宿に女中として住み込んでいたが、つい昨日、他殺死体で見つかったというのだ。優作と文雄がその死に関与しているのか?優作は弘子という女と深い仲だったのか?…疑念を抱いた聡子は、優作に満州で何があったのかを問いただすことにするが、その口から発せられた真実に衝撃を受けることに……



「スパイの妻」

以下、ネタバレの妻。


➖➖➖

黒沢清監督、ヴェネチア映画祭で受賞されたそうでまさに「お見事ーっ!」なんですけど。

果たしてお見事な出来だったのか?


うーむ。

確かに、主役3人の怪演は一見の価値はある。高橋一生のクセのあるセリフ回しで、まるで小津映画の佐分利信のような言葉遣い。蒼井優の狂気じみたテンション、東出くんのロボット演技…全てが気味悪く、のっけから不穏なのはいかにも黒沢作品。あの不鮮明な「フィルム」の禍々しさは、ホラーの黒沢らしいとも思えるし。ただ、どうしてもサスペンス映画としては巧くない。蒼井優が金庫の開け方を知っているロジック、マクガフィンであるあのフィルムの入れ替えもバレバレで、サプライズ効果がとても弱い。エンドクレジット前のテロップも蛇足すぎるし唐突。優作がなぜ外国で死を偽装しえたか…そこに野崎先生の力が働いたというなら納得できるんですよ。当時のアメリカ、検死医は日系人が多かったんだから。でも冷静に考えたら、終戦後に死を偽装する意味がそもそもわからないんだけど。

結局、「単発テレビドラマという制約で相当頑張ったクオリティだけど、うーむ…」という作品。夫婦の駆け引きは、まるでシリアスなロジャー・ムーアとバーバラ・バックのよう。大義のためにパートナーを利用するのは、果たして愛なんですかね?
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