面白かった。
多彩で動きの多い画面は、それだけで「見ている」気にさせてくれる。
こう言ってよければ「スマブラ的」なのだが、それゆえにどの演技に注目すべきかが分かりにくいのは難点か。
やはりグウェンが格好よく好きなのだが、役どころとしてはホービーが一番美味しい。
単独者であるはずのものたちは社会を構成し、特異的であるはずの出来事はカノンの一部でしかない。
個別的であるはずの物語は、他のスパイダーマンによって先取りされて語られるものでしかなく、それをいかに取り戻すのかというのはよく分かる。
ただ、そうした自己参照的な形式は、サガ形式やパロディなどで繰り返されてきたものだろう。
それに、世界か個人かという二者択一や、家族愛にまつわる内面的な葛藤というテーマ自体がハリウッド的なクリシェでしかない。
つまるところ、マルチバースというSF的想像力を持ってくることで何が新しく語られているのか、自分にはよくわからなかった。
画面は派手になり、現代的な装いをまとっているが、それ以上ではないだろう(が、続編を見ないことにはなんとも言えないところはある)。
また、宇宙は複数あれども、流れている時間はひとつであるようなのも気になった。
そのあたり、SF的な考証ではコンセンサスが取れてるものなのだろうか。