あんじょーら

眼には眼をのあんじょーらのレビュー・感想・評価

眼には眼を(1957年製作の映画)
4.8
何気なくレンタルビデオ屋さんで見かけたので手に取ってみました。が、これがとてもサスペンスフルで素晴らしい作品でした。サスペンス映画は好きな方だと思いますが、この作品は1958年の映画なんですが、今見ても斬新な演出だと思いますし、本当に脚本が凄いです。



とある砂漠のある国で医師として暮らす中年の男ヴォルテルは誤診が少なく有能な医師です。研修医や後輩の医師からも尊敬されています。フランス語を喋りますが、この国の言葉は理解できません。ある夜、自宅でくつろいでいると、守衛が電話を繋いできて、腹痛の急病人を診てくれないか?と持ちかけられますが、病院に急げ、ここには設備がなく、車なら20分程度だ、と諭します。翌朝、いつものように車で出勤する途中に1台の壊れた車を見つけ、それがどこかで見覚えのある・・・というのが冒頭です。



私にはこの国がどの国を示唆しているのか?映画の中からは察する事が出来ませんでしたが、フランス領の何処かであろうと推察されます。現地の人は違った言語を話し、違った宗教を信仰しているように見えます。



ヴォルテルの行為は褒められたものではなかったのかも知れませんが、結末について誰かと語りたくなる、そんな映画でした。



映像はとても綺麗なのに、いや、綺麗すぎるからこそ、とても不安にさせますし、演出が非常に緊張感を強いる展開を引っ張るので、とても惹きつけられます。全編、ほぼBGMが無いのも意図的で、より恐ろしさを際立たせます。



ちょっとだけ調べてみると、監督のアンドレ・カイヤットさんはもともと弁護士!!という事で、ちょっと他の作品を見てみたくなりますし、短編小説ですが思い出されるのがドイツの作家フォルディナンド・フォン・シーラッハの「犯罪」です。でもシーラッハさんよりも、もっとプリミティブな感情をサスペンスフルに扱っていると思いますし、だからこそ怖いし、誰の何に問題があったのか?を考えさせられます。



私は映画を見ている時には、その中に身を委ねてはいるものの、観終わった後に、監督や脚本が何を指示したかったのか?を考えてしまうのですが、そもそもそういう考え方は意味を求め過ぎているのかも知れません。何処かで納得したいという欲求が強すぎるのかとも考えてしまいました。



果たしてボルタクは満足したのでしょうか・・・



サスペンス映画が好きな方にオススメ致します。あ、高所恐怖症の人には、恐ろしい場面あります、私がヴォルテルなら、あそこで別れてたと思います、良かった(良くないか・・・)。