はやし

もう終わりにしよう。のはやしのネタバレレビュー・内容・結末

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

難解だと聞いていたし、『マルコヴィッチの穴』の脚本のチャーリー・カウフマンの作品なので確かに難解なのだろうなと思いながら観た。かなり万全な気構えで臨んだからかもしれないが、全く置いてけぼり喰らわずに観れた。
開始30分くらいの用務員さんが映画を観るシーンから、映画の仕組みがハッキリわかるようになっている。それまでの掴みどころのない不気味さの点と点が繋がって、そこからずっと面白かった。

ジェイクの脳内は、ジェイクの理想だけではなく、ジェイクの内にあるものを鏡のように映す。それと同様に、本作自体も視聴者の内にあるものを鏡のように映し出すような作品だと思った。観る人によって共鳴する部分が違うし、この作品への解像度に個人差が生じてしまうのも、この鏡的な性質によるものだろうと思った。

ジェイクの理想だけ、ジェイクの深層心理だけで物語を捉えようとすると、キャラクターの行動原理が全く理解できない。でもこれは理想と深層心理(特にトラウマ)が混合、葛藤していて、ときにトラウマが全てを飲み込みそうになる。妄想って、夢って、創作って、、、脳内で描かれる世界っていつでもそういうものだよなと思う。『キング・オブ・コメディ』や『ボーはおそれている』といった作品群を貫いて通った軸上の、その2作品の間に立っている作品というイメージ。
(作詞する時にその詞、曲のストーリーを浮かべながら書くけど、ストーリーのキャラクター達を思い浮かべる時ってまさにこんな感じだなと。)

ほとんどが家と車の中のシーンで、閉鎖的。アスペクト比も相まって、更に閉鎖的。大きな音が出たり、わかりやすいエンタメシーンが全く無い。それなのに家の内装とか、雪景色とか、目に映るものが頗る美しいし、『Dog Bone』のような紡がれる言葉の数々が詩的な美しさを帯びていて、全く飽きない。静かに進行していく中で、急に音が出る箇所が何箇所かあってめっちゃびっくりするし、怖い。でもこれがあるから時間の流れにちゃうど慣れて来ちゃったところで引き締められて良い。絶妙な配置。
映像だからこその美しさとか、不穏さもあったから映画として最高だった。文学的、哲学的な物語でもあるから原作も読みたいなと思った。






(全然映画本編と関係ないこと。最近日本語字幕使わずに洋画観て英語リスニングの訓練をしているけど、これは会話がゆっくりだし、複数人で同時にギャーギャー言うところもないので、めちゃくちゃ英語が聞きやすかった。てか英語音声、英語字幕の機能は全サブスクが取り入れるべき。あと日本語音声、日本語字幕もあると時代劇観やすいよねー。)
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