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新しい街 ヴィル・ヌーヴのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

新しい街 ヴィル・ヌーヴ(2018年製作の映画)
3.0
【ゲキ渋異色アニメーション】
渋谷イメージフォーラムで渋いアニメーションが上映されているということで行ってきた。『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』は入場者プレゼントで原画を配る面白い宣伝をしている作品。海外のアニメとしてはかなり大人向けらしい。果たして...

街で男が何者かに襲われる。黒づくめのシルエットに襲われた彼は、傷だらけな姿でトボトボと海辺の家に帰る。電話をすれども電話の相手はなかなか応えてくれない。彼はバーで一杯呑み、釣りに行く。黄昏に生きる男の人生と1995年のケベック州独立運動を交差させて繊細に揺らめく感情を捉えていく。そもそもレイモンド・カーバーの短編小説『シェフの家』のアニメ化という時点でマニアックなのだが、ケベック2度目の独立運動を背に世代断絶を入念に描くところが新鮮だ。彼はヒッチハイクで若者のバイクに乗せてもらう。そこでケベック州の独立に関して議論がなされているのだが、若者には「どうせ変わらない」という諦めが滲み出ている。一方、男もつい最近までアル中で家族に見捨てられ、諦めの人生を歩んでいた。そんな彼が一歩外側から黄昏に生きる者を見て心揺さぶられるのだ。

個人的に、本作はカーバーの小説というよりかは『ユリシーズ』テイストに感じた。一人の男のとある日を地味に壮絶に描く。男は愛を取り戻す凱旋の旅の道中で、暴力、独立運動、若者との世代断絶感じさせる対話といったエピソードがさざ波のように迫る。ケベック事情に精通していない為、よくわからない部分も多かったのですが、味わい深い作品でありました。
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