かしまっち

ウルフウォーカーのかしまっちのレビュー・感想・評価

ウルフウォーカー(2020年製作の映画)
5.0
絵本のようにデフォルメされた抽象的な世界観を水彩画のような柔らかなタッチで色彩豊かに表現される極上の映像が、壮麗な音楽に載せて次から次に押し寄せてくる脅威のアニメーション
場面によって様々なアートスタイルに切り替えられ、シーンを追うごとにそれらが絶え間なく飛び交うため一時も目を離せない
どこを切り取っても1枚絵として成立しうる幻想的なビジュアルを躍動感溢れる映像にしているのだから恐ろしい

クロムウェルのアイルランド侵攻を想起させるストーリーは、イングランドとアイルランドの複雑な歴史を紐解きながら両者の切実な距離感を照らし出すと共に、
自然愛護やフェミニズム、他者との交流、人の二面性や魂の呪縛と解放などといった現代にも通ずる哲学を織り込んだ思慮深い寓話へと発展していく
深く根付いた歴史とケルト文化を織り交ぜた上で高いエンタメ性を実現し、
様々な解釈を可能とする物語の奥深さと幅広い受け入れ口を両立した洗練されたストーリーに圧倒される

高い次元に練り上げられた物語、音楽、映像が組み合わさることで破格の魅力を放っている
カートゥーン・サルトルの圧倒的な力量を証明する傑作アニメーション作品だ

難易度:易
かしまっち

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