ヤマ

シュシュシュの娘のヤマのレビュー・感想・評価

シュシュシュの娘(2021年製作の映画)
3.0
地方都市のはずれで祖父の介護をしながら市役所に務める25歳の鴉丸未宇。ある日、職場で孤立する未宇に唯一寄り添ってくれていた先輩の間野が、文書改ざんを負わされた末に自殺してしまう。悲嘆に暮れる未宇だが、祖父から改ざんデータの奪回というミッションを告げられる。

個人的に最も好きな映画の1つ『SR サイタマノラッパー』入江悠監督が久々に自主映画を撮ったと聞けば見逃せない。同作に相通じる部分もファンには嬉しく、また同時にその後の作品を経て取り込まれた社会性も印象付けられる。

そんな今作『シュシュシュの娘』では移民排斥や文書改ざん、さらには権力を取り巻く偏向的な思考のグループという構図が中央に限らず地方でも再生産されているさまが描かれる。居酒屋に集った面々が醸し出す嫌ったらしさがまたリアルですこぶる良い。そこからのクライマックスは自主映画ながらも弾けた展開に見応えがある。

本作の制作背景にはコロナ禍で苦境にあるミニシアターに自主映画ができることとして資する目的があるという。目立たず息をひそめるようにして生きてきた未宇は持ち前を活かして立ち上がる。映画でも現実でも困難に抗う意志が重ねられる。
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