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おかえり ただいまのpherimのレビュー・感想・評価

おかえり ただいま(2020年製作の映画)
3.4
名古屋闇サイト殺人事件を扱う、東海テレビ製作映画。

被害者女性視点で描く前半ドラマでの情感的な溜めが、犯人の死刑を求める母を追う後半ドキュメンタリーで活きる良構成。

あと序盤でヨーヨー片手の斉藤由貴が決めポーズ、この『スケバン刑事』サービスショットは笑う。


『おかえり ただいま』監督は、東海テレビ内幕物の秀作『さよならテレビ』に“悪役”報道部長として登場する齊藤潤一。
両作とも同じ阿武野勝彦プロデューサー作で、『さよならテレビ』ラストの秀逸さを考えると、全体に重い主題を追う本作でのスケバン刑事登場の含意は深い。

  『さよならテレビ』:https://twitter.com/pherim/status/1208937086587269120

と思わせつつ、『おかえり ただいま』監督手記では「昔からの大ファン。デビュー当時のグラビア写真は今も実家の机の」などと供述されており、茶目っ気あって抜け目ない。
こうした多層性に『ヤクザと憲法』も想起され、要は東海テレビ製作映画が面白いぞという話。

  『ヤクザと憲法』:https://twitter.com/pherim/status/676339757610237952

利権防衛の欲望だけで突貫した「地デジ化」の惨めな帰結を想起するまでもなく、目下テレビ局は衰退やむなしだ。
けれどバブル期までに蓄えた人的技術的資産がこうして局所的にスマッシュヒットを出す東海テレビのケースは、むしろ電波利権を超えて地方局が生き残り得る新基軸の予感さえ。
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