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僕と頭の中の落書きたちのくまもんのレビュー・感想・評価

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
4.0
駅や電車で訳の分からない言葉を、死ぬほど大きな声で叫び散らかしている人たち。
あの人たちが統合失調症患者だと知ったのはいつだっただろうか。
100人に1人が発症するから、結構多い割合だ。

妄想や幻覚に取り憑かれているのは知っていたけど、こんなに年中いろんな人の言葉が聴こえて、いろんなものが見えていたらそりゃあんな風になる。
がん患者の夢はみんな叶えてあげようとするけど、統合失調症患者の夢は叶えちゃくれないと作中の台詞にもあったけど、精神的な病に対する理解はまだまだ浅い。

わたしは古い家で育ったので、10代の頃精神を病むとか、精神科に行くなんて恥ずかしいことのように感じていた。
現に母の妹が心を病んだことがあったが、家族一同限界の限界まで病院に行くべきではないと思っていて、実際に処方された薬を飲むまでかなり時間がかかった。

自分も精神的なことで少し前に耳が聴こえづらくなったことがあった(未だ違和感あり)。違和感を感じて一番最初に連絡したのは母親で、本格的におかしいと思って不安でどうしようもなくなったときにも夜電話したのは母親だった。出なかったし、折り返しもなかった。次に連絡がきたのは自分の要件のみのLINEで、わたしが話した耳の件は忘れてしまっていたようだ。わたしから連絡することなんてここ数年で数えるほどだというのに(話そうとしたのは年末ぶりだった)。

母親の中では高熱やコロナの方が重症で、心のうんぬんは気の持ちようでどうにでもなる範疇なのだ。別に彼女が悪いわけではないし、そういう中で育ってきただけだと思っている。

わたしは子供の頃から嫌なことがあると吐き癖が酷く、大人になっても治っていない。ストレスで夜尿症がひどくなりおむつをして寝ていたこともあるし、ほぼアル中状態で酒浸りだったこともある。けれども、あなたは大丈夫というまるで根拠のない言葉で(そう言うしかないのかもしれないけれど)、家族や恋人に宥められてきたこともあり、なにやら深刻なテンションでそういったことを打ち明けることが出来なくなってしまった。真剣に聞いてくれる人を求めたり、受け入れてもらおうという気持ちは毎度削がれてしまう。心というのはそういう風に封じ込められてしまう場がきっとたくさんあって、それがなにより辛い。そして、本人にしかその違和感の大きさや辛さがわからないことも苦しいのだと思う。
つまりは人に話すことができて、且つその人が受け入れてくれ、同じくらいの熱量をもって対峙してくれることがなによりの支えになるということで、ポールと和解できたことや、牧師的な先生の存在、彼女の存在があってよかった。

病気を抱えているけど病気そのものじゃない。
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