マキノ2

僕と頭の中の落書きたちのマキノ2のレビュー・感想・評価

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
4.3
統合失調症の男の子の話。
主人公アダムを演じるチャーリー・プラマーの声と喋り方と雰囲気がすごく好き。髪をかき上げる癖とか一つ一つの仕草が繊細で、心ここにあらずみたいな目が凄かった。

"統合失調症"っていう名前と精神的な病気だということは知っていたけど具体的にどういうものなのか全く知らなかった。でもこうやって映画になって実際にその病気と闘っている人視点を見ることができて知ることができた。こんな病気なんだってちょっとびっくりした。幻覚、幻聴って言葉で聞くほど単純なものじゃないんだなと思った。癌のように分かりやすく命を削られていく周りからも理解のある見えやすい病気ではなく、自分にしか見えないものと闘う病気。周りに自分が何と闘ってるか見せられない、理解されにくいこと、ただ精神的におかしい人に見られてしまうのが一番つらい。

アダムは恋もして、夢もあって、薬を飲んで少しずつ回復していたけど、副作用が辛くて逆戻り…今の医学では治らないこの病気のたちの悪さ。2度目の退学が決まって、料理学校にも行けなくなり、夢を絶たれて自分と同じ病気の、周りから見ると"おかしい人"しかいない施設に送られて、一人で静かに泣くシーンが悲しすぎた。施設は統合失調症の人が行き着く果ての1つだからかな…。もう普通には生きられないんだという絶望が伝わってきた。

この映画を観て思ったことは、アダムだけでは絶望しかなかっただろうなということ、周りの助けが必要不可欠だということ。両親とマヤ。映画の中でアダムが明るくなるのはアダムがマヤと一緒にいるとき。彼女の強くて前向きな太陽のようなエネルギーにアダムはすごく支えられると思う。

自分の欠点を分かってる親には強く当たってしまうのも分かる。親も子供もお互い辛いけど、何があってもどんなに反抗してもまっすぐアダムを愛して支えてくれる存在がいてよかった。最後あんだけ揉めてた義理の父とあんな簡単に和解するのはちょっと理解できないけど(笑)

アダムはこうやって周りの人に恵まれて、シェフになりたいという夢、生きる目標があるからこの病気と上手く共存して前を向いていれる。

想像したくないけど中には家族や友人、恋人でも周りに支えてくれる存在がいなくて夢も生きる目標もなくただこの病気に蝕まれていく人も大勢いるんだろう。アダムが悲観的になって"僕みたいな人は独りになって、路上で大声を上げて死を待つだけだ"と言っていたけど、どうすればいいんだろうか、この病気になってなんの救いも無かったらこの末路を辿るしかないのか?


(2回目)
告解室。アダムが自分の悩みを打ち明けても聖書の引用ばかりで明確な助言が貰えない。告解の目的も理解出来ないアダム。「相手を煙に巻くことが深い人間なわけじゃないんだよ。むしろクソだ。」←ここのアダムに共感してしまった。自分が貰いたい言葉はそういうことじゃない。

卒業式の日、施設にいたアダムに告解室の牧師さんが訪ねてくる。アダムに告解の目的を改めて伝えるため。「自分の欠点を認めるだけじゃない。その欠点と向き合う機会と強さを得るためだ」そして自分としっかり向き合うアダム。すごい素直。アダムのように素直になれない。これができるか出来ないかで大きく違うんだと思う。人として。病気とか関係なく。
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