ジェシカ・ブルーダーの原作『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』に感銘を受けたフランシス・マクドーマンドが、プロデューザーのピーター・スピアーズと映画化権を取得し、『ザ・ライダー』の監督クロエ・ジャオ（女性）に託した作品。
ベネチア国際映画祭・金獅子賞、トロント国際映画祭・観客賞ほか多数受賞。
2011年、不況でネバダ州エンパイアの石膏工場と共に町も封鎖され、仕事も住居も失ったファーン（フランシス・マクドーマンド）はヴァンに思い出を詰め込み、ひとり車中生活を始める。
ホームセンターで出会った以前の教え子に「ホームレスなの？」と聞かれ、「違うわ。ハウスレスよ」と答えるファーン。
Amazonのフルフィルメントセンターで冬期の短期労働を終えると寒さから逃れるため、同僚の友人リンダが勧めていたアリゾナ州の砂漠にあるボブ・ウェルズ主催のヴァン放浪者（ノマド）が集まる交流イベントに向かう。
亡き夫との思い出＝ホームを心に抱え、ビートの収穫作業、RVパークの管理業務、商業施設のキッチンコーナーなどの短期バイトをしながら、様々な出会いもありつつ、孤独な車中生活を続けるファーン。
主役のマクドーマンド含むクルー全員がトレーラー生活をし、出演者も実際にトレーラーで生活するノマドの方々ということで、60代、70代を越えた方々のノマド・ライフのリアリティもありつつ、マクドーマンドは適役すぎる適役の名演でした。
美しい風景や音楽、シェークスピアのソネット18など、詩的にまとめあげた印象です。
