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ノマドランドのKAJI7のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.8
「人の心とは傘のようなものである。開いた時に最も機能する。」
ヴォルター・グロピウス / 建築家(1883~1969)

2021年のアカデミー賞作品賞最有力候補に挙げられている『ノマドランド』、鑑賞してきました…!🌵🐪🌴🐫🌵🐪🌴🐫

今作はクロエ・ジャオ監督×フランシス・マクドーマンドのタッグがお送りするノマド・ムービー。去年の冬に同監督の『ザ・ライダー』を鑑賞していたので(レビューしてないけど)、この監督のゆったりとしていて、それでいて確実な芯がある文体は何となく見えてきました。
でも正直に言うと『ザ・ライダー』の方が僕は好きかな…🤔🤔

【"旅人"の夢と"ノマド"の現】
言語学専攻的な知識をひけらかすと、"nomad"とは、古くは16世紀から書に登場する「遊牧民」を指すフランス語です。(より正確に言えば、プロト言語である、ギリシア語のノマデス"νομάδες"から分化)
元々は、フランス地域から見た外敵勢力であるアラビア系遊牧民族の事を言っていました。
そして「遊牧」とは、資源のあるところ、エネルギーのあるところを求めて移り住んでいく生き方。
彼らノマドワーカーにとって、固定資産を持ってその場に留まるというのは涸れた大地を錆びた桑で耕し続けるようなもの。

彼らはそう考えているから、ある意味区別をつけるために僕らのように定住はせず放浪の旅を続けているのだろう。

と、勝手にそう思っていました。

しかし、ドキュメンタリーチックな今作を観て、その厳しい現実や彼らの抱える心肝というのが見えてきた気がします。


遊牧であっても「遊び」ではなく、失ってしまった生のエネルギーを求め彷徨う"nomad"たち。


彼らの旅は、その行動の客観性に反して、決して外向的なものではありませんでした。
アメリカという自由の国をもってしても、彼らの生き方はアウトローなものです。
でもそのライフスタイルは必ずしも反発精神に根ざしている訳ではなく、ある人には選択の余技がなかったり、ある人には最も内向的な要因があったり、またある人には悲しみを漱ぐ為だったり。一概に「ノマド」なんて言葉では括りきれない各々のドラマがありました。

「旅=楽しいもの」という観念が定着しきっている僕ら日本人には想像がつかない世界です。
でも、なんだかちょっぴりだけ、もっと自分を見つめ直してみようかなと勇気が湧いてくるのは、壮大な夜明けのシークエンスと、キャストや監督の儚くも優しい眼差しのなせる業なのでしょう。

なかなか見られない光景の連続はそれだけでも楽しかったです☺️☺️
個人的に高評価とまではいきませんが、クオリティの高い作品だったかと思います!
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