メザシのユージ

ノマドランドのメザシのユージのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
2021・47

アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。
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主人公のファーンは望んでノマド(遊牧民)のような生活を始めたわけではない。予想外の事態で、これまでとは全く異なる価値観の世界にいきなり放り出される。ただ、のちにだんだん分かってくるが、ファーンの中には開拓者精神は前から備わっていたと思う。

現代の「ノマド(遊牧民)」と呼ぶべき高齢者の人達が、Amazonの配送や、大量消費されるジャガイモの出荷工場を支える重要な労働力になってる事を初めて知った。ファーンが出会う現代の「ノマド(遊牧民)」の人々は、季節労働者として働きはするが、金が全ての資本主義的な価値観から脱却しようとする、金が全ての世界で生きることは、自分という存在を金に鎖で繋ぐことになると考えるからだ。

「ノマドランド」には、星空や自然が作り出した広大な風景、巨大樹木といった物がとても印象的な場面でてくる。それは、人は本来は自然の一部でそこに帰るべきだという意味もあるだろうし、宇宙の時間で考えたら人の一生はほんの一瞬なわけで、それならば、生きてる間にどれだけ美しい物を見るかが人生では大切なのではということなのだろう。

「ノマド(遊牧民)」の暮らしは自由で気ままな感じもするが、年齢による体力の低下や、健康面などでリスクもある。でも、人生はどちらが幸せかで選ぶのでは無くて、どちらのリスクを取るかの問題になってくる。リスクの全くない人生の選択はあり得ない。あり得ないのであれば自分が納得する方を選ぶべき。

この映画でとても良いなと思ったのは、「ノマド(遊牧民)」では「さようなら」が存在しないこと。人と別れる時は必ず「また、どこかで会おう」言って別れる。その再会はすぐかもしれないし、ずっと先かもそれないけど人と人は必ず再び巡り会うと信じいて、これはすでに亡くなった人に対しても「また、どこかで会おう」と言っているのだ。