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ノマドランドのたのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.5
家も、夫も、仕事も、生き甲斐も失ったある女性の“Nomad”としての旅の物語。

ホームレスではなく、ハウスレスだと言ったセリフが頭に残る。Homeという言葉をどのように捉えるべきなのだろう。
心があればそこはHome(劇中ではすなわちバン)なのか。物質的に依存する何か(家なのか家族なのか)が必要なのか。それぞれのアイデンティティに関係するとも思う。そう考えればノマドとして出会い“さよなら”を言わない彼らはある意味地球全体がHomeであり皆が家族なのだろう。

結婚指輪(ring)はただの輪っか(circle)。だけどその周回からは抜け出せず、むしろ指から取れないかもしれない。
言葉遊びのようにも聞こえるこの言葉。思い出、もしくは人生、そういったものを忘れるべきなのか。思い出に浸りすぎるのも良くないのだろうか。それか、忘れることはできないのか。

資本に囚われる。お金に囚われる。家に囚われる。社会に囚われる…
知らず知らずのうちに生きているだけでさまざまな事柄に囚われている人間。
やはり時には自然的に、表面上でも良いから何事にも囚われないように生きてみる。できないのならば生きてみるようにする。
そんな時間は必ず必要になるのだろう。

実際に今でも映画のように暮らしている人たちがいる。劇中では大半が年齢の高い層だとか。
テンポラリーに働いて、バンで暮らし旅をする。素敵だと思う反面、やはりたり体力的にも精神的にも辛いことがあるのだろう。

自分の好きなもの、好きなこと、好きな場所…
なんでも良いが、それらを無くしたり、裏切られたりすることは誰にだって悲しいことだ。その立ち直り方や心の傷の癒し方は人それぞれだが、ノマドたちのようなライフスタイルもあるのだと知れて、なんだか良かった気がする。

あとは、劇中の大半の人がが役者ではなく一般のノマドの人たちというのも、よりリアリティを高めているなと思った。
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