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ノマドランドのichikoのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
ぜひ映画館で観てほしい作品。
孤独と静寂と、アメリカの大自然を大きなスクリーンで感じることで、多分この作品から受け取るものって全然違ってくる。

60代のファーンは、リーマンショックの余波により長年住み慣れた街を失い、ノマドとして車上生活をし、季節労働をしながら生計を立てている。
「ノマド」というと、若い人の自由な働き方のイメージが強かったけれど、この作品で描かれるのはノマド生活をせざるを得ない高齢者たち。自分の親くらいの年齢の人が、バンで季節労働しながら生活しているなんて、ちょっと直視できないかも…。
根底にあるのは孤独や絶望なんだけど、その上に成り立つ日々のささやかな暮らしの描写が印象的だった。「それでも幸せに生きていく!」みたいな大げさな表現はないんだけど、ファーンの表情からじんわりと伝わってくる人生の喜び、みたいな感情の機微がグッときた。
スワンキーのもう一度見たい風景の話、語りかける彼女の目が本当に吸い込まれそうになるほどきれいで、信念を持つ人というのはこういう人なんだな、と思う。

あまりストーリーとは関係ないかもしれないけど、おばさんだけど母親ではない人が登場人物に多く出てくるのが新鮮だった。
「お母さんではない」女性の生き方って、そういえばあまり見たことなかったなと気づく。
全然「強く生きる」感じじゃないんだよな。儚いというわけでもないんだけど。
絶望に支配されているわけでも、希望の光を探し求めるでもない。 振り返ってみると普通の人生の映画なのかもしれないけれど、非常に心に残る作品でした。
いい映画を観ました。

2021,14
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