RITO

ノマドランドのRITOのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5
誇張なく映し出されるアメリカの乾いた現実。
画や音の演出による半強制的な昂揚ではなく、
登場人物の内面に起きる静かな動きが観る者の心を惹きつけ揺さぶる。

自分たちの考える「生活」から多くがそぎ落とされた「車上生活」は
物や情報に溢れた現代社会で生きる為に大切なものの本質をあぶり出す。
そうして見えてくるものの彩度は高く、温かく、美しかった。
同時に己が恵まれているが故に曇っている視野にも気づかされる。

人と人との繋がりの中で与えるものと与えられるもの。
多くを手放しても手放すことが出来ないもの。
決断する難しさと決断するために必要なもの。

ゆっくりと流れる映画を己の内面に照らし合わせながら
コロナ禍以降の人生をどう生きるべきか考えた。

現実の人生はそうドラマティックではない。そうドラマティックではない人生がここまでドラマティックに見えるものか。監督に心から賛辞を贈りたい。素晴らしい110分間。
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