となりの

ノマドランドのとなりののレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
よかった。

不勉強を恥じるが、日本における「ホームレス」をめぐる表象との違いを強く感じさせられた。

現代のノマドとしてアメリカの大地を放浪し、自然とつながりつつ、生きていくだけのお金を稼ぎ、ときに仲間と助け合いながら、ときにトラブルに見舞われながら、自分自身の過去とともに生きる。

まるで、ノマドとは、ひとつの問題提起の場となった生き方、その答えを得るプロセスとなった生き方のようであり、そうした生き方がドキュメンタリーのように撮られる。

とりわけラストシーンは美しく、まず、かつての自宅のドアがフレーミングの機能を果たすが、ゆっくりと歩くファーンはドアのフレーミングを解除し、そのままフレームアウトしてヴァンに乗る。
領土を囲い、文字通りフレーミングしてしまうハウスに対して、ヴァンは領土から領土へと渡り走るわけである。

もちろんヴァンも、ホームとして内部性の形式をもつが、それは季節のサイクル、仕事のサイクル、ひととの出会いと別れのサイクル、それから車自体のサイクル(走る速度、パンク、故障)と切り離さず、人生のサイクルをポリリズム化する。
それは安定からは遠いかもしれないが、時間と空間は多元化され、その複雑なリズムで生きることを余儀なくされるからだ。
それは、定住して労働することによる時間と価値の一元化を躱わす生き方であるだろう。

かくして、ノマドたちの目の前には、決して生きやすくはないし、実りある未来が約束されているわけでもないが、消尽していくわけでもないような、地平が広がっている。
定住者にとっては、ノマドは(生き方の)開拓者であるように見えるかもしれない(が、おそらくは違うのだろう)。
となりの

となりの