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ノマドランドのmurmurfyのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7
仲間が先に出発したときの、自分ひとりだけが世界に取り残されたような孤独と寂寥感が見事に表現されていて、胸が締め付けられた。自分が誰かや何かを後に残して出発するときだって、同様の痛みを伴う。

気楽なようで見えて、旅人(ここではノマド)は不安定な存在だ。寄辺なく、常に変化に晒される。その変化(出会い)に救われる瞬間もあれば、飲み込まれてどんぞこに陥る時だってある。

そんな傷だらけの中であっても、旅人は進むほかない。移動と変化そのものを自らに取り込み同化しているから、移動することが自らを保つための手段となる。
移動と変化を自己同一化した者が背負わざるを得ない切なさ・寂しさ・辛さがベースに描かれているからこそ、お互いの弱さを補い合うノマドたち同士の助け合いの様子や、ふとした瞬間の喜びがいっそう美しく尊く見えた。
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