lingmudayan

ノマドランドのlingmudayanのネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

東京国際映画祭にて観賞。冒頭とラストで登場する、主人公ファーンがノマドになる以前に住んでいた企業城下町(エンパイア)は雪と霧で白く冷ややかな画だが、他のノマドたちと交流するキャンプシーンは焚き火の暖かな画になっている。ルドヴィコ・エイナウディの音楽は甘ったるく感じる向きもあるかもしれないが、僕は叙情的な効果を生んでいると感じた。息子一家と暮らすことを選んだデヴィッドの家に向かうシーンではその音楽がブツっと切られるが、これはデヴィッド家での滞在が快いものとならないことを予告している。車を修理するため頼った妹との会話から推測するに、ファーンは自分で掴んだ幸福でないとしっくりこないのではないか。そうしたある種の頑固さは理解できるし、それを貫くことを可能にするのがノマドの「光」の部分ではあると思う。主人公とデヴィッド以外は全て実際のノマドワーカーらしく、死を前にして人生で最も美しい風景を見たアラスカに戻ったスワンキーの話は胸を打った。ノマドたちの名前やエピソードが具体的に示されるのは、彼らを名も無き労働者へと捨象しようとする社会への異議申し立てなのだろう。
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