みずいろ

私というパズルのみずいろのレビュー・感想・評価

私というパズル(2020年製作の映画)
4.1
子供を産んで初めて本当の意味でわかるようになったのは、陣痛がいかに死ぬほど痛いかということと、子供を失う悲しみはこの世で一番の苦しみだということ。冒頭からずっと他人事とは思えず、画面の向こうに自分の姿を見るような切実な気持ちで見終えた。

誰も悪意はないのに、坂道を転がっていくように悪いことばかりが起こる。特に夫婦仲の変化は、夫婦という名の他人だからこその嫌悪感に満ちていてとてもリアルだった。そしてもし同じことが起こったら、私も裁判なんて何のために?と思うだろう。このあたりの感情は、産んだ母ならではな気がする。そして娘の写真を見た後の憑き物が落ちたような表情すごく上手かった、胸に響いた。娘がたしかに自分のところに産まれてきた、ということを初めて感じられたんじゃないかな。

種から芽が生えてくるように、春になればりんごが実るように、当たり前のように悲しみはいつか思い出になる。絶対に消えはしないけど、姿を変える。希望はあると思える静かなラストシーン、とても良かった。
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