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親愛なる同志たちへのSのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.5
 呼びかけられる「同志」たちが、どのような排除のうえに成り立っているのかをわかりやすく描出している。さしあたりはコサック、スターリンによる大粛清、そして二十回党大会での批判の後に起こった地方都市の飢饉とその隠蔽と、ソビエトロシアの歴史のさまざまな陰の部分が連なるように配置される。
 スターリンやフルシチョフをおちょくったりできるけどレーニンは無理、って感じなのか。スターリンの肯定的な評価がいまのロシアではそれなりに広がっているらしいけど、善悪はっきりとわけてくれる(スターリンはかなり恣意的に敵認定してたと思うけど)超越的なリーダーがほしいという感覚は、戯画にとどまらず現実に蔓延しているものだろう。

 まあしかし全体的に単調で、KGBの男が娘探しに協力するあたりの流れはちょっとご都合主義のようにも感じる一方で、組織にせよ人間にせよなぜそうなるのかわからないが何らかの力によって動いている不気味さが伝わってくる。前半部あたりのドキュメンタリー的な演出も、さすが同時代を生きたコンチャロフスキーという感じでした。
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