極楽蝶

いとみちの極楽蝶のレビュー・感想・評価

いとみち(2020年製作の映画)
4.0
田舎(青森)の女子高生の自我の成長を描いたユーモアたっぷりの良作。内気な女子高生がメイド喫茶でアルバイトし、そこで起こる出来事の中で成長してくなんてストーリーは意表を突かれ愉快です。三味線のシーンが少なかったのは残念だけど。

主人公いと(駒井漣)は、言葉で表現することが下手で内気だけど意地っ張り(じょっぱり)という青森県人の特性を丸ごと備えた女子高生。その上、特技は津軽三味線で、曲はすべて耳コピー。冒頭でいとが授業で青森の歴史を朗読する場面は、その後の物語の展開に期待を持たせますねぇ(笑)
この映画で一番印象的な場面は、2度出てくるいとの黒髪に櫛をとおすところですねぇ。最初のシーンでは、いとが子供の頃に亡くなったお母さんが櫛をとおす。二度目はメイド喫茶でライブをやる前に幸子(黒川芽以)が。特に二度目は黒髪の美しさに心惹かれます。何度か現れる岩木山の山容(いとの家からも大きく見える)や青森の海が印象的。何度も青森には行っているけど、また早く行きたいと思いを抱きました(笑)
この作品で、横浜監督は、細かいところまで田舎を描いているなぁと感じる。たとえば、いとがお母さんを早く亡くしておばあちゃん(西川洋子)に育てられたって重要なポイントだと思う。いとの訛りが強いのもおばあちゃんに育てられたから、津軽三味線が得意なのもおばあちゃんの影響(もちろん、記憶に残る縁側でお母さんが三味線を弾く姿も影響しているけど)。いとのアルバイト先のメイド喫茶に永遠の22歳がキャッチフレーズの幸子はそこそこ大きな子供がいる中卒のシングルマザーという設定も都会のシングルマザーとはちょっと事情が違う田舎の事情をよく描いていると思う(詳しいことは書きませんが)。
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