うかりシネマ

ビューティフル ドリーマーのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

文化祭の準備期間中の美大で、映画研究部が部室から古い台本を見つける。「夢みる人」は撮影すると必ず悪いことが起こる“いわくつき”の台本だったが、映画撮影することを決める。

タイトルからも分かるとおり『ビューティフル・ドリーマー』をオマージュしており、「夢みる人」もまんま同作。
映研のメンバーとゲスト(劇中でも役者という設定。というよりほぼ本人役)で演技に差がありすぎるし、そのわりにはフェイクドキュメンタリー風には撮られていない。かといってメタ構造にしたり押井守のような衒学性も、『サマータイムマシン・ブルース』のようなドタバタ感もない。オタク的な映画タイトルの引用は多用されるが、地に足ついた感じもしない。

しかし、給湯室のシーン(つまりラムのあの台詞)をピークに、その前後でこの映画自体が『ビューティフル・ドリーマー』の本質を引き継いでいることが分かる。
通年アニメの縛りとして“終われない”ところにメタを作ったのが同作だが、本作では実在の人間を使っているので、美大生という設定も相まって、“終わる”モラトリアムを描いている。実写でしか描けない、『ビューティフル・ドリーマー』の続きを描けたと言える。

ただ、ラストシーンが同作のエンドロールの完コピなのは意味不明。
ミニチュアを用意した意味も分からないし、降りかかる不幸も魅力的でない。中断された撮影があれで終わるのも、不要なカットなので繋がらない。
何より、あのシーンは「夢が終わり現実に帰る」「が、まだこれも前日なのかもしれない」「というのを内包してアニメは続く」というメタなので、再現する意味がない。
給湯室のジムノペディはよかったのに、ED曲のオリジナルは特に何も感じず。曲まで完コピされても困るが……。

“終わる青春”のテーマを語るのであれば、映画を完成させて終わるべき。ラストシーンに意味を持たせるべきだった。
映研もまた役者が演じているというメタ構造をやりたいなら、本広克行は「中身のないセンスだけの衒学」に向いてなさすぎる。
テーマは好きだが、肝心の本編は微妙。