アルパカメタル

ノイズが言うにはのアルパカメタルのレビュー・感想・評価

ノイズが言うには(2010年製作の映画)
3.8
監督自身がレズビアンであることを家族にカミングアウトする、そのときを自身と家族に演じてもらって再現するというとんでもない構造の映画。家族にカミングアウトしたのは事実であって、映画に映ってるのはその事実に登場した人間たちで行う再現。前半の再現にあたる部分は特に説明もなく進んでいくが劇映画的にカットが割られているので、これがただのドキュメンタリーではないことは容易に想像がつく。後半は家族にどういう映画を撮りたいかを打ち明け実際に撮影していく様子がおさめられている。どんどん現実と虚構の間が揺らいでいき、被写体そして監督の心の揺らぎがまじまじと映っていた。これだけを観ると映画を撮ること、それを享受するという行為の残酷さに心が重くなってあまり言葉が見つからないのだが、この「ノイズが言うには」のアンサーは「あの優しさへ」にある。