JunichiOoya

ノイズが言うにはのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

ノイズが言うには(2010年製作の映画)
5.0
小田香さんの『セノーテ』大阪公開初日。併せてこの日から『ノイズが言うには』を含む過去作の特集上映も。
彼女の地元大阪で、以前からの支持者も含め大盛況。満員のシネ・ヌーヴォってやっぱりええわ。

初日トークショーは小田さんと同じく監督の戸田ひかるさん、映画編集の秦岳志の三人で。
秦さんが繰り返しておられた「傑作ですね」という感嘆のことばに圧倒的支持を送らせていただく。

この映画はアメリカに映画留学時代の小田さんがご家族にゲイとしての自身をカミングアウトした経緯を映像化した極めてプライベートな内容。カミングアウト前後のご本人と周囲の戸惑いから受容、さらなる結束への過程が、大学の課題制作という「創作」を記録するドキュメンタリーとしてメタ構造的に描かれる。

前作『鉱ARAGANE』公開時のトークを始め、「見たい」という質問に「まだその時ではないので…」という風なお答えが続いていたのだが、ようやく対面させていただいた。(この日はご家族、映画にも登場する友人もいらしておられた)

トークで小田さんが仰って興味深かったのは「「人」を描くことだってします」(『鉱』での人に分け入った撮り方をしないんじゃないか的な評価と対比してのお話)、「『鉱』『セノーテ』だけの自分じゃなく、これまで経てきた自分を見せなきゃ、セルフドキュメンタリーや日記映画も見てもらって、そこから」っていうところ。

小田さん自身を表現した映画としてドキュメンタリーであるとか創作であるとか、そんな「枠」なんかまるで無意味だと思い知らされる傑作です。
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