多タロ

ザ・フラッシュの多タロのレビュー・感想・評価

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)
3.6
DCEU初のフラッシュ単独作品にしてプライベートでは2度の逮捕のほか問題だらけの主演はエズラ・ミラー最初で最後の晴れ舞台となる本作。
ポスターやキービジュアル、宣伝で大仰に告知されている通りアメコミお得意のマルチバースがテーマとなっており、バリーが持ち前のスピードを暴走させた結果タイムリープを引き起こし、過去改編による並行世界を作り出してしまうという某マーベルの蜘蛛男と親近感というかデジャヴというかを覚えてしまうお話となっている。


※以下ネタバレ

まず自分だけではなく本作を視聴した観客の中で少なくない人数が抱いたであろう感想という名の問題点は前述した予告をはじめとする宣伝で大半の見どころをオープンにしてしまっている点。二人のバリーにマイケル・キートンバットマンにメインヴィランのゾッド将軍、おまけにクラーク・ケントに代わる超スペックなスーパーガールの存在まで事前に大っぴらにされてしまっている関係で、せっかくのクロスオーバー全開お祭り作品にも関わらず、純粋にサプライズとして楽しめるのは終盤カメオ出演しているリーブスーパーマンらとエンドクレジットのジョージ・クルーニー+αくらいなもので楽しみも半減。せめてバットマンくらいはバットスーツだけ公開してメインの演者は見てのお楽しみといった風な演出に出来なかったものか。
そもバリーがタイムリープ能力を手に入れたきっかけがあっさり過ぎたり、途中新しい世界線のミディアムヘアバリーのノリが軽すぎて鬱陶しく、これが心変わりするくだりが少々雑だったり、ラスボスとなる闇堕ちバリーの尺が短いせいでゾッド将軍にその存在を喰われてしまっているといった惜しい箇所はあるものの、ベタではあるが見ていてワクワクさせられる最序盤の超スピードを活かした赤ん坊救出シーンやなんだかんだ言ってもアガるヒーローの共闘、そしてタイムリープを題材にしたものとして王道な物語進行は全体的にうまくまとまっているため、要所要所の気になるポイントが余計に残念に思えてしまう。
落ち目のDCEUがフューチャー&パストよろしく起死回生を賭けて強引にでも世界線のリセットを図り、兎にも角にも話題性を重視して情報をばら撒いたはいいもののそのせいで作品自体の楽しみが削がれてしまっては本末転倒。長く続くシリーズの制作が難しいのはわかるものの、言い方は悪いが終わり行くシリーズはイタチの最後っ屁のようなものではないだろうか。
どこかのブログだったかフィルマークスの感想だったかは忘れたが、序盤の過去を悔いる台詞があるからこそ改編を乗り越えたエンドクレジットで登場するのはジョージ・クルーニーではなくベン・アフレックでなくてはならなかったという見方には目から鱗だった。けれどもマルチバースの広がり&ファンサービスにはこういったサプライズも必要なわけで。うーん、やっぱりフランチャイズって難しい。
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