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相撲道~サムライを継ぐ者たち~のjamのレビュー・感想・評価

3.9
お相撲は好きですか?
こう聞かれてハイ!と即答する人は
最近はあまりいないかもしれない

国技だけれど、実はそんなによく知られていない
"エンターテイメント・ドキュメンタリー"と銘打ったこの作品は
大相撲にそれほど興味の無い人ほど観て欲しい内容


クリスマス
世間の喧騒を他所に
背中から湯気を立ち上らせての朝稽古
幕下の若手たちに続き
数多の力士の憧れ 幕内の関取の鬼気迫る姿
注目は厳しい稽古で有名な境川部屋の部屋頭 
大関 豪栄道豪太郎

素顔は猫好き、童顔の彼は
まさに"サムライ"
防具ひとつない、巨体どうしのぶつかり合いで
怪我は日常茶飯事の彼ら
けれども
寡黙な大関は弱味を見せないために
テーピングもせずに
怪我は?と聞かれれば「大丈夫」

悲願の初優勝
テレビ中継越しに覚えた彼の涙からの感動

綱を張ることは叶わなかったけれど
その背中は多くの人々の記憶に残る


そして
もう一人の"サムライ"
その姿は 時代に合わせて稽古方法を改革し続ける
高田川部屋にあった

一度は手にした関取の地位から
怪我により序の口まで落ち
人の3〜4倍の稽古を重ねて幕内に返り咲いた 
竜電剛至

穏やかに笑みを湛えた彼の取り口は
上半身が柔らかいという

怪我をしたのは己の弱さと言い
更なる高みを目指して"当たり前"の努力

決して驕らず
相撲が取れる喜びを素直に

取材時に結婚式を控えていた
彼の伴侶となる年上の彼女
彼の取組についての一言にじん、とくる

「先を見てるんで 
怪我しなきゃ次があるんで」


本来なら九州で開催の一年最後の本場所
コロナ禍で今年は両国開催

秋場所よりも少し観客を増やして入れられるようになったとはいえ
あの溢れんばかりの満員御礼を知っていると寂しく感じる

私も今場所は両国に行く予定は無く
テレビの前で彼らの真剣勝負を見守る

武士道こそ、相撲道
…確かめるように
jam

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