たと

映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチのたとのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

210613@丸の内TOEI。
同名漫画シリーズを原作としたスポーツ作品。2021年4月より放映されているTVシリーズに先立って公開される予定だったが,この状況下でやむなく6月に延期公開されたとのこと。
まずTVシリーズとひと繋がりのコンテンツとしての評価を述べておくと,驚くべきことにこの作品を見ていないとTVシリーズで主人公・恩田希が女子サッカーにかける想いはおろか,なぜサッカーをやっているのかすらわからない建て付けになっている。本来はTVシリーズ放映前に公開される作品であったことを差し引いても,無料で見られるTVシリーズの視聴が映画視聴を前提としているのは正気とは思えない。どういった経緯で企画されたのかとても気になるところだ。TVシリーズはというと,映像に勢いがなく,話も尺稼ぎとしか思えない不自然なフィラーに溢れていて,何が言いたい話なのかすら掴みにくい残念な出来栄えになっているため,そちらを先に見ておくとこの作品に対して少なからず好印象を抱くことができるだろう。
劇場版だけを見れば,性別が異なるというだけで男子に負けたくない,仲間とサッカーを楽しみたいという恩田希の原点に帰着するように綺麗にまとまった話になっている。恩田の薫陶を受け努力の鬼となったナメックこと谷くんも良い対比になっていて,彼を見て自分の原点を思い出す2つのシーンがどちらもストーリーの転換点になっているのは納得がいく。
一方でもにょるシーンも多い。まず,真っ向から男と渡り合いたい(恩田の言葉を借りれば"雌雄"を決したい)という話の流れなのに,先生へのプレゼント攻撃だったり無理やり弟に成り代わったり,不正な手段に頼るストーリー展開が全く腑に落ちない。恩田を守るためというのはわかるけど,でも強引にでも試合メンバーには入れるべきだったんじゃないか,と思うくらいにはノイズだ。
また,恩田を守るためとはいえ頑なに公式戦に出さず,かといって努力を続ける恩田に別の道を示さなかった監督も微妙なキャラクターだ。TVシリーズ第一話にてようやく劇場版の話を振り返りつつ女子サッカーという道を提示するが,このシーンは劇場版にも入れないとあまりにも監督の立ち位置が宙ぶらりすぎるだろうと思ってしまう。
そういう意味で,イマイチすっきり見られない出来栄えという印象だ。この作品を見たあとのTVシリーズの視聴が前提に作られているのか,この作品内で完結していないシーンもあり,尺余り気味なTVシリーズにこの話を入れ込んだほうが適正だったのではないか?という気すらしてくる。
映像もTVシリーズと比較すれば真面目にサッカーシーンを描こうとしている分だけ良いという程度で,目を瞠るシーンは新人戦前半のナメックのシーンくらいか。
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