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あんにょん由美香のマツキのレビュー・感想・評価

あんにょん由美香(2009年製作の映画)
3.3
前半から終わりにかけて日韓合作の走りであった純子のシーンが挿入されている。あまりにもベタな演技や展開、韓国人の俳優のたどたどしい日本語に場内から笑い声が聞こえる。由美香さんの映像を流しながら思い出話をしているイベントのシーン、何故、彼女はこの作品に出たのか?何故、彼女は愛されたのか?を紐解こうとする

予想外に北海商科大学教授の野平俊水が登場、純子のビデオを保管していた経緯や韓国においての映像倫理について教えてくれる。毛一本も見逃さない厳しさの筈なのにがっつりなのだ。監督であるユ・ジンソンは、ヨン様の初主演作品を作っていたりする。日本の俳優をキャスティングしたヤナギダさんと共に韓国へ行き、通訳さん、ユ・ジンソン監督、共演者へインタビューという軸と平行して監督という名の男の履歴書が開示される

先陣は、カンパニー松尾と硬式ペナスの撮影現場へ巡礼

硬式ペナスでのイメージカットにて岡村ちゃん聖書の歌詞が用いられていた。恋心はだだ漏れで、彼女に向けたラブレターのようだ。第一発見者平野監督同様、彼女の死を近くで感じ引きずっている監督たちと松江監督との温度差を感じる。

「監督失格」の平野監督と由美香さんが訪れた夕張から三角山にかけての岬にて、「由美香」の再現を平野監督にレクチャーされ、真似する松江監督を見ていて、彼女と関わった彼らと巡礼する事で、第三者として作品を作り上げる監督の眼差しと、彼女に焦がれた青年が彼女との思い出を擬似体験するセンチメンタルを想像した。永遠に手に入らないミラーボールのように彼らの夢や願望を光に変えて回転する最後の映画女優は愛されていた。

最終的に純子で変更されていたシーンを彼女の為に撮影する事になり、当時の監督、役者によって演じられた。書き換えられた台詞にユ監督の粋を感じた。彼女は肉体的に死んでしまったが、石垣島の映画館で彼女の映画が上映されていたり、同じようなエピソードを平野監督も話していた。寂れたラブホテルのチャンネル、彼女の笑顔に救われたのだろう。
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