ミズキ

ラブ&モンスターズのミズキのレビュー・感想・評価

ラブ&モンスターズ(2020年製作の映画)
4.1
愛と怪物の対峙は、言わば怪物映画の副産物として描かれてきた。しかし、この映画ではタイトルから「愛」と「怪物」を同等に重きを置き、その上で物語を進めていた。

CGによる荒廃した地球がとても新鮮で、変に現実離れしていないカタチがそこにあったように思える。小惑星を大量のミサイル壊して地球を守った結果、空から化学物質が降ってきて昆虫類や爬虫類と言ったこれまで弱者として生態系を生きてきた生物たちが怪物(ものによっては怪獣)となった世界。現実にいる生物ベースだからか、ある程度原型を保った上で、見事に吠えていた。

一方、この作品で描かれた「愛」は、怪物たちに対して変わりのないものであった。恋人との愛、家族愛、犬との愛、そして、AIとの愛…?
愛と言えども、「恋」ではなく、様々なカタチの愛を描いていたと思う。
主人公は、7年前に生き別れになった恋人に会うために安全地帯を離れ、1週間の危険な地上への旅へ出ることになるが、その旅を通じて「愛」のカタチに触れていく。

たしかに、よく見る物語かもしれないが、私はこの主人公、そして世界観を通して、「弱者」が立ち上がる物語、そして「愛」の力が混沌を防いぐことを伝えていると思う。

まず、主人公。美味しいミネストローネと無線機を直せるくらいが取り柄(絵も上手い)だが、そんな彼が思い立って旅へ出る。そして、誰よりも頼りになる人物となるあたりは、弱者から強者へと成るプロセスであった。
また、この世界観である、生態系の弱者が怪物級となり人間に牙を剥く。この有様はまさに弱者が立ち上がったと言える。

また、ラストシーンでの一幕は、主人公が経験と知識を身に付け、さらに絶体絶命の事態に相手の目を見ることで、窮地を脱するが、これもまた「愛」である。また、この映画では、奪い合いが「愛」の反対に置かれており、そこで「愛」が勝つことがこの映画のテーマを「怪物」から「愛」へと昇華させているのではないか。

余談だが、皮肉なことに、やはり人間がいない方が地球は快適そうで、自然が生い茂って、のびのびとしていた。その点でいうと、環境というのもこの映画の副産物として置いてあると思う。

この作品についてを、こんな真面目に書いてしまったが、コメディ・アクションとして軽い気持ちで見れる。アカデミー賞視覚効果賞にとノミネートされていたため、見応えはバッチリだと思う。

少し過小評価とも思えるFilmarksの評価であるため、多くの人に見てもらいたい作品だ。
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