海辺のダフ屋

オクトパスの神秘: 海の賢者は語るの海辺のダフ屋のレビュー・感想・評価

3.8
心が荒み、日常に絶望を感じていたひとりの男が、海に潜り運命的に出会った「タコ」に魅せられていく時間を切り取った、ドキュメンタリー作品。


もはやラブストーリー。ふたりが手と手を取り合う瞬間には鳥肌が立った。それがタコの防衛本能なのか、人間との距離感を測るための手段なのかわからないが、本当に心を通わせているかのように見えた。


両者の間に言語はなく、レンズ越しに映し出されるのは人間からの目線と解釈。だからこそこれは、究極の片想いなのかもしれない。しかしそれでも、海に、タコに魅せられ追求し続けた飽くなき探究心がたどり着いたふたりの日々は、どこまでも美しい恋物語のように思えた。


と、芸術を見ているかのような美しさを感じつつ、まるでディスカバリーチャンネルを見ているときのようにタコやその他の海の生物の生態系についても好奇心がどんどん湧いてくる。まだまだ解明されていないことがやまほどあるように、海には不思議がいっぱいだと改めて思わされる。


作品としての素晴らしさと、ドキュメンタリーとしての神々しさの全てが詰まった見事な一本。『第93回アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞』受賞、おめでとうございます!!!
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