しゃり

映画 太陽の子のしゃりのレビュー・感想・評価

映画 太陽の子(2021年製作の映画)
5.0
とにかく、終始、柳楽優弥に魂が震わされて、呼吸がずっと荒くて、ドキドキしてる。

おにぎり…。


ちなみに映画館で拍手を聞いたのは初めてだったけれど、「三浦春馬の遺作」として観たいわけではない人間もいる、ということは一応言っておきたいなと。
三浦春馬の笑顔の内にある危うさが凄く生かされているなと思いながら、仄暗い気持ちになった。



「たくさん、未来の話をしよう」と言ったあとも、兄弟が未来を語っているシーンは出てこなかった。「その後」を思い描いていたのは有村架純だけ。
【戦争は女の顔をしていない】というが、まさにこの時、個人の命を惜しまないことを良しとする教育の中で、男性は未来を口に出せなかったのも確かなんだろうなと。

原子のイメージ映像みたいなものとして何度か出てきた、落下し、跳ねる映像ピンボールがすごく緊張感があって良かったな…。

「戦争」を見ようとするといつも、日本が世界初の「被爆国」であるという大きな事実がまずあって、
それはどうしても日本人を戦争の「被害者」側の視点に近づけていく気がする。

ただ、本作の「日本の科学者は開発競争に負けた」という台詞は象徴的で、言い換えれば日本も研究が進んでいれば核爆弾を他国へ落としていたということ。日本よりもアメリカの方が核を早く完成させた、それ以上でも以下でもないのだと、強く印象付けてくれた。

大学でも、戦場でも、「個人」を尊重できない国家に勝利や発展があるわけがないのに…どうして…なんて無謀な…と、戦争を見るといつも思わずにはいられない。
あの研究室では学生に「死ぬな」と言えた教授がいたからこそ学生も人間を保てたのだろうな。

科学者の「業」と向き合い続けた修が、
弟も一人戦地に向かいながら食べたであろう母の大きなおにぎりを食べながら、
「未来」を選択して抱き合うシーンが本当に見事でした。
しゃり

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