このレビューはネタバレを含みます
1945年夏。
日本は第2次世界大戦の真っ只中にあった。
国は逆転の要として「F研究」と呼ばれる新型爆弾の研究開発に着手。
白羽の矢が立ったのは京都帝国大学の原子物理学権威である教授と、その教え子たち。
この史実を基に、生死が隣り合う時代を全力で駆け抜けた若者たちを描いた作品。
爆弾開発に没頭する石村修。
"建物疎開"により家を失った幼馴染の世津。
戦地から一時帰宅を果たした弟の裕之。
先が見えない戦時下。
研究者として、市井の女性として、軍人として、何を思ってどう生きたか。
全体を通してとても静か。
しかしその静けさの中で、核に対する激しさが熱を帯びていくように感じた。
"科学は人間を超えて行く
それは誰にも止められない
これまでもそうだったし
これからもそうだ"
修をはじめとした荒勝研究室の面々の葛藤の日々に焦点を当ててもよかったように思う。
設備不足の中で硝酸ウランからウラン235を取り出すことや、原爆投下直後の広島に軽装で研究偵察に向かうことを、どう捉えてどう臨んでいたのかを知りたかった。
毒をもって毒を制す、科学者として当時を生きる修の肌感が他一般と乖離しているようでそれにもまた言いようのない恐怖を感じた。