ぶみ

サン・セバスチャンへ、ようこそのぶみのレビュー・感想・評価

3.0
人生は映画のように、想定外。

ウディ・アレン監督、脚本、ウォーレス・ショーン、ジーナ・ガーション等の共演によるスペイン、アメリカ、イタリア製作のドラマ。
サン・セバスチャン映画祭に参加した主人公が、妻の浮気を疑い出したことから巻き起こる騒動を描く。
かつて大学で映画を教えていた主人公、モート・リフキンをショーン、映画の広報をしている妻のスーをガーションが演じているほか、ルイ・ガレル、エレナ・アナヤ、セルジ・ロペス等が登場。
物語は、スペイン北部のバスク地方にあるサン・セバスチャンを舞台として、モートがスーとガレル演じる映画監督との浮気を疑う一方で、そのストレスから受診した診療所のアナヤ演じる医師に惹かれてしまうという大人のラブ・ロマンスものとして展開するのだが、ドロドロとした湿っぽい雰囲気は一切なく、軽妙な会話劇をベースとしたコメディテイストで進行。
そして、特徴的なのは、モートが昼夜関係なく見る夢がモノクロ映像として描かれており、どうもそれが数々の映画の名作を再現している模様。
後から調べたところ、オーソン・ウェルズ監督『市民ケーン』、フェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』、フランソワ・トリュフォー監督『突然炎のごとく』、クロード・ルルーシュ監督『男と女』、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』、イングマール・ベルイマン監督『仮面ペルソナ』『野いちご』『第七の封印』、ルイス・ブニュエル監督『皆殺しの天使』と、50年代から60年代の作品ばかりで、そのタイトルはどれも耳にしたことのあるものばかりなのだが、残念ながら一つも観たことがなかったたため、ピンと来なかったのは我ながら残念だったところ。
クルマ好きの視点からすると、中盤モートが医師とドライブデートするシーンで使われていたのが赤色のサーブ・9-3のカブリオレで、美しいサン・セバスチャンの街並みにピッタリでセンス抜群であり、赤いオープンカーが似合う街並みが皆無の日本とは正反対。
また、御年88歳であるアレン監督の日本公開最新作なのだが、クレジットでは2020年制作と、実は数年前の作品ではあるものの、未だに現役として頑張っているその姿は、日本なら、さながら山田洋次監督のよう。
前述のように往年の名作のオマージュが数多く登場するため、観たことがある人はもっと楽しめるだろうし、そうじゃない私のような場合でも、風光明媚なサン・セバスチャンを舞台とした大人のラブ・コメディとして楽しめる仕上がりになっているとともに、原題が『Rifkin's Festival』とあるように、まさに主人公のお祭りのような滞在を体感できる一作。

人間は人生を満たせる。
ぶみ

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