MasaichiYaguchi

たぶんのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

たぶん(2020年製作の映画)
3.7
“小説を音楽にするユニット”「YOASOBI」の原作をYuki Saito監督がオリジナルストーリーで映画化した本作は、新型コロナウィルスによって新しい生活様式を余儀なくされ、そのことによる“変化”で別れを迎える男女3組のショートストーリーが感性を刺激するような映像で描かれる。
この男女3組は、大学生カップルのササノとカノン、高校生カップルの川野と江口、そして社会人カップルのクロとナリで、夫々の別れが切なく展開する。
3組の男女の別れは3章仕立てで構成されているが、映画ではこの3章が交互に登場し、設定も内容も違うが互いに反応し合い、一つのテーマを浮き彫りにしていく。
タイトルの「たぶん」はポスターの真ん中に出ている言葉「曖昧な言葉の中にある、確かな気持ち。」と呼応しているが、新型コロナウィルスが沈静化する目処が立っていない、不安や不確かが漂う今の社会を表していると思う。
本作の公式ページには「当たり前が当たり前じゃなくなった今 誰もが経験する〈新しい時代の、新しい選択〉」という印象的な言葉もあるが、我々は仮にアフターコロナが到来しても決してコロナ前には戻れないと思う。
永遠に続くように思われた平穏な日々や恋愛関係においても確かなものなど一つもなく移ろって変化する。
井伏鱒二の言葉で「さよならだけが人生だ」というのがあるが、さよならは新たな始まりでもある。
夫々のラストに滲む切なさと希望は、そのようなことを感じさせてくれる。