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サマーフィルムにのってのakqnyのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.0
青春映画なんだけど、「好きだから撮る」という純粋な創作の必然性をエネルギーそのままぶつけられような映画だった。

何かを見て好きとかすごいという感情を抱く時、膨大なエネルギーの種が生まれるのと同時に自分はその主体にはいないという客観性についても向き合わなくてはいけなくて、その事実は見ないように、そのまま消費者として消化してしまうことが多い。
それはなにも青春時代だけではなく常日頃絵を見てもサッカーの試合を見ても思うことで、だいたいは才能とか境遇で片付けてしまいがち。
でもある時、そのエネルギーを爆発させるような、日常の優先順位が全てその好きとかすごいを中心に決まるような出来事があると、ふっと身が軽くなって、なんでもできるような気がする。その一瞬の輝きこそ青春だと思うし、人はいくつになってもそのきっかけとなる瞬間を待っているような気がする。

青春のきっかけは突然空から降ってくる。それははたまた偶然か、それとも未来の自分からの贈り物なのか。



これまで青春映画が苦手だったのは、ある種の友情や闘いや挫折や恋といった青春イメージへの自己投影や共感を強要されるからだったのだけど、こういう創作へのエネルギーの詰まった映画はいいなあと思えた。

そして伊藤万理華さんは本当に好きなものへの情熱や創作のエネルギーの塊のような人だなあと改めて感じて、今こうして沢山の映画を見ようと思えるのも、文化芸術に沢山触れて、好きなものを好きって言っていいんだと思えたのも、ああかつての彼女からきっかけを沢山もらったんだなあとふと思い出した。
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