ぺんじん

激怒のぺんじんのレビュー・感想・評価

激怒(2022年製作の映画)
3.7
俺たちは!腐ったみかんじゃねー!
管理社会化が進む現代のディストピア的状況へのドロップキック!異質分子から体制への反撃だ!
オープニングのタイトルシーンから怪しげ満点。前半からフルスロットルのバイオレンス描写も良い!ちょっと90年代頃のアクション映画を感じさせる部分もある。
信号を守る役人たちが一方で引きこもりの人の家に強引に入っていくという、体制側とルールからはみ出してしまった人々との対比が最後まで一貫して描かれていく。
途中暴力刑事の深間がアメリカの施設に連れていかれる描写があるんだけど、あまりにも前振りが無くて笑っちゃった!これは『食人族』(残念ながら未見)的なモンド映画的描写みたいなんだけど、これはニッチ過ぎる!このシーンはあまりにも独特で面白かったけど、時間経過の演出が分かりづらかったのが残念…
全体的にバイオレンス描写は楽しかったけど、深間がアメリカから戻ってきた後の描写が同じ事の繰り返しが多くてちょっと単調だった印象。駐車場のシーンもなにが起きているのかが分かり辛かった…
深間が結構体制側の中心人物に呼ばれているだけど、その理由がいまいちよく分からない。体制側が一枚岩で不満分子もいないので、そこに深間が呼ばれる理由が分からない。反体制側を炙り出すにしても、別に宴会に呼び出す必要は無いような…
あとディストピア的な描写が多くて、市民の自警団はかなりナチスの親衛隊を思わせる感じなんだけど、あまりにも純粋な「悪」として描き過ぎている感じがする。ディストピアが怖いのは所謂善良な市民が出世や保身の為にどんどんと排他的になってしまうという部分なんだけど、あまりにも市民を「悪」として描き過ぎてしまうとディストピア的な恐怖が薄まってしまう気がする。それだとただ単純に悪い人間を懲らしめてやれば良いという話になってしまう。たぶんそういう意図は無いんだけど、体制側が非道な行動に至る要因の描写がちょっと薄過ぎたように思う。
それでもデ・パルマ的な演出は楽しかったし、後半の怒りが爆発するバイオレンス描写は良かった!漂白されるな!激怒しろ!
ぺんじん

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