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ミッドナイト・スカイのMOEのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・スカイ(2020年製作の映画)
4.0
静謐な宇宙空間、静謐な北極圏、という寂寞を孕んだ二ヶ所から届けられる、壮大な物語。
良作でした。
ジョージ・クルーニー監督、中々やるやん。

何故、IMDb5.6/10、ここでも総合3.4と世間では軒並み評価が低めなのか、正直私は分かりません。

地球を覆う放射能への恐怖、パニックが描かれることはなく、ただ1人の男がたった一つの目的のために身を削る、そのシンプルさ、映画的な派手さを物語の核にしないスタンスが良かったと思う。

丁寧過ぎる伏線のおかげで、序盤に秘密はすぐ予想出来てしまうけれど、分かっていてもなお、やはりジーンと来ちゃう。
贖罪と言ったら重過ぎる、後悔と言ったら軽過ぎるかもしれないが、オーガスティンがこれまでの人生で背負ってきたものが、ふわっと軽くなる瞬間は何とも言えないカタルシスを巻き起こす。

宇宙空間の映像美、素晴らしい。
重力を失った血に美しさを見出す日が来るとは思わなかった。
他にも、フェリシティの夢の中に登場するユートピア的世界が美しく、印象的だった。

ラストのフェリシティの長回し映像も、淡々と”これから”に向かって進んでいく姿を捉えることで、未来への過度な希望を描くのでもなく、新たな日常への準備をただ定点の目線で見送る、という無駄のなさが心地良い。

今作のようなクオリティの映画がNetflixで今後作られていくとすると、劇場で映画を観ることの概念がますます覆されてしまうかも。
ちょっとした懸念を覚えつつも、劇場・配信問わず、「映画は映画だ」ということで、ファンとしてその楽しみを平等に享受していきたいものです…。
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