森もり子

オールドの森もり子のレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
4.5
「そこにいると老いが進むビーチに閉じ込められた」という直接的なストーリーを大げさな描写で描いたエンタメスリラー。
しかし、同時に人生について深く考えさせられる快作。

そもそも「老い」というものを逃れられる人間は一人もいなくて、マクロな視点で見るとすべての人生は刹那なわけで。ならば我々が今いるこの世界が、あの恐怖のビーチではないとどうしていえようか。
彼らが体験したことは、僕らが体験することで、それがつまりは「人生」なのです。

人生は恐怖とともにある。歳を重ねることで誰の身にも降りかかってくるであろう恐怖。
それは、自分の容姿が変わっていく恐怖であり、能力が下がっていく恐怖であり、病が進行していく恐怖であり、大切な人が変化していく恐怖。
そしてなにより、死へのカウントダウンとしての加齢に対する根源的な恐怖。
そういった恐怖を、圧縮された一日でこれでもかと見せつけてくる映画だった。

ただ、シャマラン監督は、人生の恐怖を示すだけでは終わらせてはいない。
映画の中心に据えた家族のドラマが、人生とは苦悩の中で成長することであり、他者を受容していくことであること、だから老いることはただ恐ろしく虚しいだけのものではないことも示してくれる。

未来を見る夫と過去を見る妻という設定も面白いし、そういった細部へのこだわりも好み。
台詞からなにから全体的に無駄のない構成で、飽きることなく楽しめた。
森もり子

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