ゆず

オールドのゆずのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.6
感情的な要素が多すぎると、怖くなくなってしまう。ホテルの部屋に家族が初めて入ったところで、窓の外から左右に行ったり来たりするショットは、『サクリファイス』から参考にしている。
『藪の中の黒猫』この映画では、幽霊のように頭に布をかぶせた女性たちが森の中を歩く姿が捉えられている。本作でもクリスタルが素顔を見られないようにと、同じように布を頭にかぶり、娘の名前を呼びながら海辺を彷徨う場面があるが、それはまるで霊になってしまったかのよう。“目に見えない敵”を描くことが好き。これまでの作品でもやってきたが、目に見えるような敵が物理的に襲いかかってくるのではなく、今にも獲物を捕らえようとしている猛禽類が迫ってくるようなイメージ。観る者自身に恐怖が降り注いでくるようなもので、非常に恐ろしく記憶に刻まれる。このような類の作品は大衆向けとしては少し挑戦的かもしれないが、そういった恐怖に襲われる観客を見ることにも興味がある。こうした演出は、ミニマリズムなどを駆使した日本映画にも見受けられる。

「皆殺しの天使」「美しき冒険旅行」「ピクニックat バンキングクロック」「裏窓」

今、時間の感覚がない。わが子や両親を見ていて、自分が人生のとても曖昧なところにいるような気がしてしまう。人生のどこかをふわふわと浮かんでいるような。かつては、自分は永遠の子供だと感じていた。でも、もうそうは思えない。自分が今、人生のどこにいるのか、わからないから、この話に取り組んでみたかったんだと思う。
本作のキャラクターたちは、時間に勝とうとするんです。『時間よ、そんなに速く進まないでくれ!』となんとか時の流れを止めようとする。

美しかった景色が、圧迫感ある危険な雰囲気を出してゆき、初めは美しく見えた水も、死を連想させるものにしか見えなくなる。安全と思っていたものもゆっくり危険に変えることが、この作品で目標としていること。

カメラワーク、氷鬼、ラストは蛇足?
黒澤明
ゆず

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