似太郎

拝啓天皇陛下様の似太郎のレビュー・感想・評価

拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)
4.8
たとえ戦争が終わっても兵士・山田正助(渥美清)の意地というか煮え切らない思いが伝わってくる、この世の不条理を描き切ったブラック・コメディ風戦争映画の傑作。

兵士・山田正助の先輩に当たる長門裕之が、しっかり者でホントーに良かった❗️年月が流れても男同士の友情だけは変わらず。とにかく主役のダメダメ山田正助が愛くるしい映画なのだ。寅さんとはまた違った意味で味わい深い作品。

喜劇なのに、物悲しすぎてぜんぜん笑えない…そこが致命的ではあるが、重厚な画作りと相俟って独創的な雰囲気の漂う邦画である。

どんなに世界の不条理に抗おうとしても、最終的には流されるしかない。そんな人間の真理が美しくも滑稽に描かれている点が素晴らしい。この世界は「矛盾」があるから成り立っている。

「拝啓、天皇陛下様。陛下よ、あなたの最後の赤子のひとりが、この夜戦死をいたしました。」の手紙で幕を閉じるラストの痛烈なアイロニー。泣きと笑いの人情喜劇であり、真っ当な反戦映画である。これは傑作。
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