ボブおじさん

パリの調香師 しあわせの香りを探してのボブおじさんのレビュー・感想・評価

3.7
かつてはパリの香水業界の頂点に君臨したものの、思いも寄らぬ挫折を味わった女性が、善良な運転手との交流を通して人生の再起を果たしていくさまを繊細なタッチで描く人間ドラマ。

「リード・マイ・リップス」で難聴者の役を巧みに演じたエマニュエル・ドゥヴォスが、仕事のプレッシャーと忙しさで、突如、嗅覚障害になり地位も名声も失ってしまった元天才女性調香師を演じている。

人付き合いが苦手で高級アパルトマンに住む、繊細で気難しいアンヌと、娘の養育権を得るため、嫌な仕事にも耐えながら働くワンルーム住まいのギヨーム。

交わるはずがなかったふたりの人生が少しずつ交差し、やがてお互いに欠けているものを少しずつ補い合っていく。香水も人生も、複雑な成分が混じり合ってこそ、豊かになる。人生を豊かにする調合は、ひとつじゃないと教えてくれる😊


公開時に劇場鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。


〈余談ですが〉
調香師と聞いて真っ先に浮かぶ映画がある。「ハンニバル」だ。

ハンニバル・レクター博士からクラリス・スターリング捜査官宛に送られてきた手紙の便箋に、かすかに残るハンドクリームの香りをクラリスが男女3人の調香師に分析してもらうのだ。

こだわりの強いレクター博士がオーダーで作らせたと思われるこの香りを香水の専門家である調香師に分析させ、それをヒントにクラリスはレクターの潜伏場所へと近づいて行くのだった😊

調香師
「ハンドクリームですね、天然のアンバーグリスに、テネシーラベンダー、それから…羊毛、やっぱり羊毛です」

クラリス
「アンバーグリス?」

調香師
「アンバーグリスはクジラから採れる天然の希少香料です。残念ですが、我々アメリカでは絶滅危惧種法で輸入することはできません」

クラリス
「合法的に入手できる国は?」

調香師
「もちろん日本。それとヨーロッパでも。パリ、アムステルダム、ローマ。 あとはおそらくロンドン。この香りはオーダーで調合されたものです」

クラリス
「入手可能なお店はわかりますか?」

調香師
「 もちろん。店舗のリストをすぐに送りましょう」

印象的なシーンなので覚えている人も多いだろう。それにしてもこの調香師たち、まさにプロという感じでかっこ良かった😊