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アンダードッグ 後編のEDDIEのレビュー・感想・評価

アンダードッグ 後編(2020年製作の映画)
4.0
人間には闘わなければならない時が必ず来る。勢いのまま突っ走った前編から後編の序盤は停滞も感じたが、ボクシングの試合は迫力満点。大村の闘う理由がすべて台詞で語られるのはやや残念か。シリアスと笑いのバランスが絶妙なのは好感。

あまりにも大満足だった前編に対して、後編はまた毛色が大きく変わります。
冒頭からしばらくはなんとボクシングのシーンがほぼ(というか全く)ありません。
前編でこれまでのボクシングに打ち込む(しかない)主人公の晃が映し出されていましたが、後編では彼の生き方に少し変化が訪れます。
人との出会いを通じて、人はまた大きく進路変更するわけですね。新たな出会いもなく、毎日変わらぬ生活を続けていると、それは何の変貌もないただ日々を消化していくだけになります。
ただ彼は前編でデビューから怒涛のように勝ち続ける大村龍太(北村匠海)と出会い、晃がドライバーを務めるデリヘル嬢の明美(瀧内公美)と出会い、ボクサーに本気で挑戦するお笑い芸人の宮木瞬(勝地涼)らと出会ったことで、彼の人生は大きく方向転換を迎えます。

覚悟の違いが試合の雌雄を決めたと言っても良いのですが、後編はボクシングとは離れてしばらくは晃とその身の回りの人物の人間ドラマが中心に描かれることになります。
そして後編の中盤以降からは晃と龍太の対戦へと話が展開していくのですが、なぜ龍太が晃に執着するのかは台詞ですべて明かされていくので、それまで演出で映画らしく丁寧に描いてきたのにここで説明台詞をてんこ盛りにしてくるかと少し残念な気持ちになりました。

とはいえ、もうクライマックスのボクシングの試合は前編同様に熱い!2人の本気でぶつかり合う魂と汗と心臓の鼓動すら聴こえてくると感じるほどの熱さを感じました。

また、キャストで言うと、もう前編と後編で人間としての深みや魅力が大きく変わる森山未來の演じ分けは要注目。
前後編ともにセックス描写も多いのですが、そこに彼らの素の感情が込められているような気がしました。

女性キャストでは『喜劇 愛妻物語』の好演が記憶に新しい水川あさみが晃の妻・佳子役。ここにも一人の変わらない男に嫌気が刺して、さらに母として一人で一本立ちした元妻の激しい憤りを巧みに表現。
そして、加奈役の萩原みのりが龍太の妻を好演。これがまた龍太の苦しさを理解し、夫としてそばにいて欲しいけど、彼にも満足に悔いなく生きてほしいという想いを上手く演じていました。

各キャストが魅力的に人間臭い不完全な人間を好演していた本作。
とてつもなくエネルギーに溢れた素晴らしい作品でした。

※2020年劇場鑑賞149本目
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